フォームだけじゃない

ランニング教室というと、「きれいなフォームで走れるようになりたい」「疲れにくい走り方を身につけたい」という相談を多くいただきます。

もちろん、フォームは大切です。

身体の使い方を見直すことで、余計なブレーキを減らしたり、同じスピードでも楽に走れるようになったり、特定の場所への負担を減らせる可能性があります。

ただ、フルマラソンを走るとなると、フォームを直すだけでは十分ではありません。

マラソンには「走る練習」が必要

42.195kmという距離を最後まで走るためには、心肺機能だけでなく、長時間動き続ける持久力、脚の筋持久力、エネルギーを効率よく使う能力などが必要になります。

これらは、フォーム練習だけではなかなか身につきません。

やはり一定期間、継続して走り、ある程度の距離を踏む必要があります。

実際、マラソンに関する85研究をまとめたメタ解析では、週間走行距離、週のランニング回数、ロング走の距離、32km以上のロング走の回数、トレーニング時間など、多くのトレーニング量の指標がマラソンタイムと関連していたことが報告されています。つまり、全体としては「しっかり走っている人ほど速い」という傾向が確認されています。

さらに、市民ランナー441人を調べた研究では、週40km未満のランナーはフィニッシュタイムが遅い傾向があり、週65kmを超えるランナーは速い傾向がありました。また、最長距離が25km未満だったランナーも、タイムが遅くなる傾向がみられています。

だからといって、「毎週65km走らなければならない」という意味ではありません。

年齢、走歴、仕事、家庭環境、故障歴などによって必要な練習量は変わります。しかし、目標が高くなるほど、それに見合った練習量が必要になるということは知っておく必要があります。

目標タイムによって練習量も変わる

市民ランナーをマラソンの完走タイム別に調査した研究では、実際の週間走行距離にはかなり大きな違いがありました。

マラソンタイム平均週間走行距離週のラン回数最長ロング走
4時間30分超約44km約4.4回約29km
4時間〜4時間30分約56km約4.9回約32km
3時間30分〜4時間約62km約4.1回約32km
3時間〜3時間30分約82km約5.0回約31km

もちろん、これは「この距離を走れば必ずこのタイムが出る」という表ではありません。あくまで実際のランナーを比較したときの平均値です。

それでも、3時間台で走るランナーほど週間走行距離が多かったという傾向はかなり明確です。

例えば「まずは完走したい」という方と、「サブ4を達成したい」「サブ3.5を狙いたい」という方では、同じ練習をしていてよいわけではありません。

目標が変われば、必要な距離、ペース、ロング走の長さ、練習頻度も変わってきます。

ただし、毎回追い込めばいいわけではありません

ここも大切なところです。

「速くなりたいから毎回頑張って走る」

これは必ずしも効率的ではありません。

2025年に発表された約12万人、15万回以上のマラソンを分析した大規模研究では、速いランナーほどトレーニング量が多かった一方、その増加分の多くは低強度のランニングでした。

つまり、速いランナーほど毎日全力で走っているのではなく、ゆっくりしたランニングを含めて多くの距離を積み、その中に必要な強度の練習を組み込んでいたということです。

マラソン練習では、

「ゆっくり長く走る日」と「少し負荷をかける日」を目的に応じて組み合わせること

が重要です。

そしてロング走も欠かせません。

先ほどの研究では、マラソン前の最長距離が25km未満だったランナーはタイムが遅い傾向がありました。一方で35kmを超える距離まで伸ばせば必ずさらに良くなる、という明確な結果でもありませんでした。

そのため、30km前後のロング走などを、走力や故障リスクを見ながら計画的に入れていくことが大切だと考えています。

フォームと練習メニュー、両方を見る

私のランニング教室では、フォームを見ることはもちろん大切にしています。

ただ、「フォームを直して終わり」にはしたくありません。

その方が、

「初めてフルマラソンを完走したい」

「サブ4を達成したい」

「3時間30分を切りたい」

など、どこを目指しているのかによって、必要な練習は変わるからです。

フォームを整える。

走る距離を少しずつ増やす。

ロング走で長時間動き続ける身体を作る。

必要に応じてペースを上げる練習も入れる。

そして疲労を抜く。

これらを組み合わせて初めて、「マラソンを走る身体」ができていきます。

フォームは大切。
でも、フォームだけではマラソンは走れません。

目標から逆算して、その人に必要な練習量と内容を考える。

水戸ランニング教室では、走り方だけではなく、「これから何を、どのくらい走ればいいのか」まで含めてサポートしていきます。

参考文献

Fokkema T, et al. Training for a (half-)marathon: Training volume and longest endurance run related to performance and running injuries. Scandinavian Journal of Medicine & Science in Sports. 2020.

Gordon D, et al. Physiological and training characteristics of recreational marathon runners. Open Access Journal of Sports Medicine. 2017.

Doherty C, et al. An evaluation of the training determinants of marathon performance: A meta-analysis with meta-regression. Journal of Science and Medicine in Sport. 2020.

Muniz-Pumares D, et al. The Training Intensity Distribution of Marathon Runners Across Performance Levels. Sports Medicine. 2025.